一週間後。

どうしたワケか今週は、広海君が実験室に姿を現さなかった。

(ま、おかげでヒヤヒヤせずに済んだけど)

それでも、朝大学に出てきて夜部屋に帰るまで、いつ来るか来るかとピリピリ神経を使いながら過ごしてしまうワケで。

(ストレスでハゲちゃいそうだな)

そんなこんなでやっと迎えた土曜日。

ミライのチェックの為に研究所へと向かう。

(このチェックが終われば、あとは部屋にいれば余計な心配をしなくて済むし、ようやく気が抜けるゾ)

タクシーを降り、エントランスを通って2階の控え室の扉を開ける。

パッと顔を上げた所長は、相変わらずミーちゃんとじゃれあってた。

「やあ。待ってたよ。さっそくあっちへ行こう」

立ち上がって寄って来る所長。

「あ、ええ」

頷いて、所長と一緒に研究室へと入る。

「どうだい、ミライとの毎日は。順調に過ごせてるかい?」

「ええまあ、今のところは。今週は広海君も来ませんでしたしね」

これで春休みが明けて、広海君が毎日実験室に来るようになったら…。

「確か週明けから前期が始まるんだっけ?でもまあ大丈夫だね、この調子でよろしく頼むよ」

この調子でって、

「いや、広海君が朝から来るようになったら、どうなるかわかりませんよ」

ホント、どうなるんだろ。

「先週は彼女とも上手くやってたんだろ?大丈夫大丈夫、元気出して行こう!」

相変わらず軽いノリで肩を叩いてくるナ。

言う方は簡単でしょうけど、実際やってるこっちは大変なんですよっ。

「そんな元気出ないですって。こっちはやっと週末だって、ホッとしてるぐらいなんですから」

愚痴だって出ますよ。

と、所長がじーっと見つめ返してきた。