お寿司をご馳走になり、ミライのチェックも終わって、所長の車で僕の部屋まで送ってもらった。

「じゃあ、よろしく頼んだよ~」

空になったメタノールのタンクを抱えて玄関から出て行く所長。

「お疲れ様で~す」

後ろ姿に声をかけ、ドアを閉めて鍵をかける。

振り向くと、微笑んで立つミライ。

う~ん。

(なんだか構えちゃうな)

ロボットだってわかると。

(気をつかうよなぁ…)

今僕の目の前にいるのは、ミライという名の世界初のロボット。

(きっと、莫大な研究費をつぎ込まれてるに違いないよな)

そんなロボットと毎日を一緒に過ごして、面倒を見なくちゃいけない。

しかも僕は僕で今まで通りの研究もこなさなくちゃいけないんだ。

(ただでさえ広海君を相手に大変だってのに~、)

それだけじゃない。

(広海君がミライの正体に気付くまで、黙って様子も観察しろって言うんだろ?)

オマケに周りにはバレない様になんて…。

(無理だって)

溜息もつきたくなるよ。

「どうしたの?」

と、ミライが小首を傾げて寄って来た。

「ん、いや、これから先、大丈夫かなって思ってさ」

…って、何をロボット相手に話してるんだろうね。プログラムだってのに。

「大丈夫よ」

ミライがスッと僕の手を取ってきた。

「そんなに心配してる方が体に悪いよ」

ニコッと微笑み掛けてくる。

そういや、所長もそんなこと言ってたな。

「…そうだね」

微笑み返すと、ニッコリと笑顔で僕の手を握り返してきた。

柔らかく、あたたかな温もりを感じる手。

まるで人間みたいなミライとの、一年間の耐久試験。

そうだよ。

(出来る事から一つづつ、やってみよう)

こんなコト、やろうと思ったって出来ないんだから。