「そもそも最初はね、ボクは誰かに、この子の最終の耐久試験をお願いしようと思ってたんだよ」

「耐久試験?」

「メカニズムが耐えられるかを実証する為の、耐久試験」

そういう試験は、確かに必要なのかもしれませんけど。

「人間としての立ち振る舞いを、この子が長い期間に渡って完璧に出来るか、それを一年間君に預ける事で確認したくってね」

ん?

一年間預けるって、所長、

「まさか、このまま一年間一緒に暮らせっていうつもりじゃ、」

「よくわかったね!」

ハ~ッ。

「2週間って話は何だったんですか」

「あれは、まずは君に一緒に住んでもらう為の口車だよ!」

あきれますよ。

ナニを一人で喜んでるんですか…。

「君に預けて共同研究をすれば、耐久試験も出来て研究データももらえて一石二鳥、いうコトなしって事になるだろ?」

って所長、それは所長の都合でしょ。

「どうして僕がそんなオタクな試験を引き受けなきゃならないんですか。僕はイヤです。カンベンしてくださいよ」

正直な気持ちですっ。

「イヤイヤ、そんな事を気にしてるんだったら、それは杞憂《きゆう》だね」

杞憂?と、所長が真正面から見つめ返してきた。

「これは、ただの機械好きが自分の満足の為にやってる事じゃない。これからの社会の為にやってる事なんだ。近い将来ロボットが世の中に出て行けば、介護してくれたり、警備してくれたり、危険な仕事をしてくれたり、その活躍の可能性は無限大にあるんだ。人々の生活を助け、暮らしに笑顔を与えてくれる人間そっくりのロボット。その先駆けとなるこの子の最終の耐久試験を、ボクらと一緒にやってくれないかって、君にこうして、この研究所を代表して頭を下げてお願いしてるんだよ」

う~ん、そんな風に言われると言い返し辛くなってしまう…。

「この最終試験を一緒に乗り越えてくれる君の協力があって、初めて完成の日が来るんだ。君の協力が必要不可欠なんだよ」

「…そう言われたって」

今一歩気が進みません。

「耐久試験だけでもここでやるのは、ダメなんですか?」

確かめるように聞き返すと、所長がパッと両手を広げた。