そういえば、ミライはスッと僕の懐に入って来るな。

なんでだろう。

僕に余計な心の駆け引きを感じさせない。

そう、物心つく前の小さな女の子がなついて来るみたいに。

ただ傍に居たいって純粋な気持ちでくっ付いてくる感じ。

「…そうだね、君と違ってな~んにも求めてないからかな」

ちょっと皮肉を込めて言ってやった。

「あ、そ~う。じゃあ、私が求める女だってわかってついて来てるってコトよね、セ~ンセ☆」

目の前すぐに顔を突き出してニヤけてる。

「ん、」

これって倍返し食らったかな?

「もう1階上がるよ~先生」

エスカレーターを降りる広海君に続いて、腕を組んでるミライとタイミングを合わせて、トンッとステップから降りる。

「ウフフッ」

微笑んで見つめてくるミライ。

組んだ腕で感じるミライの温もりが、素直に嬉しい。

「良かったねセンセ」

エスカレーターを折り返しながら声を掛けてくる広海君。

「お近づきの印に、ミライさんにも何か買ってあげたら?」

「ん、そうだね」

答えて振り向く。

ミライが嬉しそうに微笑んでくれてる。

見つめる笑顔に微笑みを返すと、ミライがさらにニッコリと笑顔になった。

なんだか嬉しくなってくるね。

「さ、乗るよ」

笑顔のミライと並んで、トンッとエスカレーターに乗る。

腕にキュッと抱き締いてくるミライ。

一緒に乗ったステップが、やがてグーンと上に向かって上昇し始めた。