いまさら追い掛けたところで、何か言えるわけでもないけど。

「妙な話になっちゃったな…」

仕方なくカウンターに向き直った。

どうしたもんだろう。

「私、先生と付き合った方がいい?」

おっと、大胆に聞いてくるねミライ。

(ん~)

なんかそういう風に大人の微笑みをみせられると、逆に冷静になっちゃうな。

「いやいや」

ただ共同研究の間だけ、体が心配だから一緒に住んでるだけ。

体が心配だから気になってるだけ。

(そうなんだよ、ウン)

そんな事になったら、広海君は研究室でもどこでも、研究そっちのけでからかって来るに決まってる。

エサは下手に与えないに限る。

(そうしよう)

面倒事はゴメンだしな。

(とりあえず今出来る事は、)

ジョッキに残ったビールを空ける事かな。

と、カウンターの中からスッとマスターの手が空いたジョッキに伸びてきた。

「いろいろと、深いご様子で」

「え、ま、まあ…」

マスターにも気をつかわれちゃったよ。

(フ~ッ)

何で僕がこんな目に遭わなきゃいけないんだ?

クーッ、教授のせいだ。

やり場のないこの憤りをどうしてくれるっ。

「いかがですか、もう一杯」

「…お願いします」

うん。

もうしばらくこのまま、この店で酔いどれる事にしよう。