その日は、夕方まで何事もなく過ぎていった。

…が。

ガチャッと突然扉が開いて、

「こんにちは~先生っ!」

と、アイツがやって来た!

(ワッ、来たっ!)

反射的に立ち上がってしまう僕。

春休みだから来ないと思い込んで油断してたよ。

(別にやましい事はないんだけど、)

ミライと一緒に暮らしてるんだと思うと、何だか後ろめたいような…。

「や、やあ」

思わず動揺。

(あぁ、)

自分でもなんて正直なヤツなんだろうと思う。

これで悟られないワケがない。

「えっ、…」

と、ピクンと立ち止まる彼女。

(ほらね)

目線だけが、僕とミライを交互にチラチラ見て動いてる。

こういう目の動き、僕が隣の研究室の女性助手と一緒にいる時にもしてくる。

僕が他の人とちょっと話そうものなら、すぐチョッカイ出して来るんだよな。

からかってるというか、ヤキモチ焼いてるって感じなんだよな~。

そういうのは自分の彼氏だけにして欲しいよ。

「ねぇ先生、その人は?」

と、じっと僕を見据えて聞いてきた。

「今度、自然科学研究科と共同研究をする事になってね。ロボットの行動プログラムの開発に、僕らの人間行動学を参考にしたいらしいんだ。彼女は、そこの研究所から派遣されてきた研究員なんだよ」

そう言ってる間も、彼女はミライを上から下までジロジロ見てる。