「大沢君が担当する、生理学的測定機器とビデオカメラを組み合わせる行動観察・解析という研究の性質上、実験環境を整える為に新合同研究棟の五階に無音室を備えた実験室を構えてましてね」

「確か、『設定環境下での行動発現に係る生理学的変化分析と研究』と言いましたか」

所長が真面目な口調で答えてる。

(おおっ、)

この話について行けるのか。

「よくご存知で。様々な設定環境下での個々の個体での行動発現、集団での行動発現の変化を、複数の生理心理学的測定機器の具現的数値パラメータを交えて分析し、…」

って教授、もっとわかりやすい言葉で説明してあげたらどうですか?

…って言ってもムリか。

教授の得意満面の説明は、五階にある真新しい実験室に着くまで長々と続いた。

「さあどうぞ。ここが自慢の実験室ですよ」

教授が鉄製の重たい扉を開けて構えた。

まず入ると窓際に机が並んだ前室がある。

そして防音ガラスがはめ込まれた仕切り壁の向こうに、

ワゴンに載った測定機器が並ぶ電磁波防御の無音室があった。