目の前のスタンドに、点検中のミライが微笑を浮かべた表情のまま立っている。

まだミライは、何も知らない。

「所長、頼みますよ。何とかならないんですか？僕とミライの実験は続けられないんですか？」

何としてもミライに笑顔でいて欲しい。

願う気持ちで横に立つ所長に尋ねた。

「…局長は譲らない人だからさ」

力のない声でボーッとミライを見つめてる。

（所長がこの調子じゃ…）

どうにもなりそうにないよ。

（…教授にお願いしたって同じだしなぁ）

局長に会う事すら嫌がってたんだから。

（ハア～）

溜息が出るよ。

と、横から所長がじっと僕を見つめてきているのに気づいた。

「…ウン。初期化するなら今かもしれないね」

えっ？！

「な、何ですか、何言ってるんですか所長！」

もう諦めたんですか？！

「…」

所長が黙ったままじっと見つめてくる。

「ほら、動揺してるだろう？」

ナ、ナニ言ってるんですか、

「当たり前じゃないですか！」

そんな事を言われたら！

「だからさ…」

と、所長がじっと動かなくなった。

「何ですか？何考えてるんですか？」

微笑みもなく、眉間にしわを寄せてじっと考え込んでる。

今までの、いつも明るい前向きな所長じゃない。

「…」

と、所長がいったん目を閉じてゆっくりと開いた。