朝。

目を覚ますと、カーテンの外はもうすっかり明るくなっていた。

引き戸の向こうのテーブルの上にはビールやら皿やら昨日の余韻がそのまま残っていて、アルコールとキャンドルの香りが混ざった甘ったるい臭いが部屋中に漂ってる。

「…」

すぐ横には、毛布の中にうずくまって横になる広海君の顔がある。

「…」

スヤスヤと寝息を立てて眠る広海君。

そっと頬を撫でると、指先にちょっとべた付きを感じた。

（生身の人間だもんな）

汗が乾けばざらつくし脂っぽくもなる。

肌にも息の温もりにも、生きてるからこその湿り気がある。

胸の奥でトクトクと脈打つ心臓には、永遠じゃない儚さがある。

だからこそ、この温もりが愛おしく思えるんだ。

「好きだよ、広海…」

囁きながらそっと頬にキスをする。

と気付いたのかどうか、広海君の顔が少し微笑んだように見えた。

（素敵なクリスマスの朝を、ありがとう）

こんなに幸せな朝は、初めてだよ。