「すごいな。いいな。羨ましいな。変わったの持ってるな。なんだそれ。どこがいいんだ。マンガ趣味だよ。そんなのオタクの持ち物さ。ほら見てウワサのあの人よ…。もう覚えきれないくらい色々言われた。マスコミだって付きまとった。テレビに雑誌に週刊誌、そりゃあ取材の嵐だった。何しろ世界で初めての、たった一台のシロモノだったんだよ」

じっと僕を見て言葉を続けてくる所長。

「でもお陰で、声を聞いて動いて喋ってっていう魅力にハマり込む人が増えて、このロボットは爆発的にヒットした。ものの数ヶ月で街のどこでも見かけるようになった。今じゃ持ってるって事を誰も気にしたりしない」

僕から目を逸らそうとしない所長。

「言いたい事はわかるだろう?ボクはこのミライを、ミライだけで終わらせるつもりなんかないんだよ。もっとたくさん世の中に普通に存在するようにしたいんだ。ロボットが当り前にボクらの傍で微笑んでる。そんな世界が、これからのボクらの新しい『未来』なんだ。その先駆けとなる一号機の、『ミライ』のパートナーとして、君が必要なんだよ」

キュッと口元を締めて続けてくる所長。

「そりゃあ生半可な事じゃないよ、世間の目に耐え続けるのは。だけどそれを乗り越えなければ、これからの『みらい』はないんだ」

所長が、僕の肩に手を置いてきた。

「わかってくれるね。この困難を乗り越えてくれる君に、ボクらの『みらい』を託したいんだよ」

何て重みのあるセリフだろう。

(ボクらの『みらい』を託したい)

すべては僕に懸かっているという事か…。

「こんな所で怖気づいてないで、世の中に飛び出していって欲しいんだ。『みらい』は君が背負ってる。ボクらの『みらい』の為なら君は必ず耐えられる。そうだろう?君はそんな男だと、ボクは心から信じているよ」

ポーンと肩を叩いてくる所長。

力のこもった眼差しの奥に、僕への期待が詰まってるのを感じる。

何だろう。

この、心の中に沸々と湧き上がってくる『勇気』に似た感覚は。

(よーし)

こうなったら一つ、やってやろうじゃないか!