「ついでに説明っぽく付け加えるとですね、ある程度時間が経つと『好きな人』以外の記憶は基本的な情報を除いて圧縮されて、書庫フォルダに閉じ込められるんです。さらに一定の期間なんのアクセスもないとそのデータは消去されてしまう。つまり、好きな人以外との記憶を、ミライは忘れてしまうんですよ」

へぇ~、

「忘れるのか」

ロボットが忘れるなんて意外な感じだな。

「顔は覚えてるけど『誰でしたっけ?』って場面に出くわした事はあるでしょう?」

「ああ、そういえば」

「それと同じになるワケです。幾ら何でも、無尽蔵に覚えていくなんて事はムリですからね」

そうか。

記憶できる容量には限界がある。

そこを上手くこなしているワケか。

「よく出来てるよな~」

ホント、よく考えてあるよ。

「ハハハ、今となってはそう褒めてくれるのは先生だけですよ」

本田君がマウス片手に微笑んでる。

(そうか、)

今まで意識してなかったけど、

本田君だってこの研究所の一員なんだ。

所長だけじゃなくて、ここにいるみんなの努力の結果として、ミライがいるんだよな。

改めて頭が下がる思いだよ、本田君。