「結局はダイレクト過ぎたんですよ。感情のトリガーとなる、電圧を制御する為に組み込んだハードのシステムが。好きな人の動作や言葉に対する反応が強く現れ過ぎたんですね。ロイはあまりに無条件に管理者を愛してしまったばっかりに、熱い情熱を寄せ過ぎてこういう事態に陥ってしまった、という訳です」

首を竦めてみせる本田君。

「無条件に管理者を愛した…」

そういうプログラムが働いていたのか。

「じゃあ、誰が管理者になったとしても、同じようにその管理者を愛したって事なのか」

僕じゃなくても、ミライは管理者になる人なら誰にでも好意を持つというワケか…。

「ロイはそういう事ですね。でも、ミライは違いますよ」

えっ?

「違うって?」

どういう事?

「はい。ミライは管理者と好きになる人がイコールじゃありません。ミライが好きになるのは、一番長く傍にいてくれる人なんです」

「一番長く傍に?」

「そうです。初めからミライは、一目惚れするようには作っていません。今のプログラムでもそれは引き継いでますよ。ミライは、初期化されて何もない状態から時間が経つにつれて、一番長く記憶されている人に好意を寄せるようにしてあるんです。人間だってそうでしょ?ずっと一緒にいる人を好きになる。好きだから一番長く傍にいる。それと同じ理屈、って言ったらいいですかね」

遠く一点を見つめる本田君。

「なるほど」

そんな仕掛けになっていたのか。

一目惚れはしない。

傍にいてくれる人をだんだんと好きになっていく…。

と、本田君が作業台に向き直った。