夜。

シャワーを最後に浴びて浴衣に着替えて畳敷きの部屋に戻ると、布団が手前に一つ奥に二つに分かれて敷かれていた。

奥の布団の上には浴衣姿のミライと自前のパジャマ姿の広海君がペタッと座り込んで、お互い髪をいじってる。

(…手前が僕ってコトだな)

で、少し離れて真ん中がミライで奥に広海君ってワケか。

(手強いな)

どうする。

話し掛けるキッカケを見つけないと…。

考えあぐねながら、ミニキッチンの冷蔵庫を開けてミネラルウォーターを手に取った。

「ねぇ広海さん」

と、ミライが広海君に話し掛ける声が聞こえてきた。

ボトルの栓を開けながら聞き耳を立てる。

「先生のコト、まだ怒ってるの?」

って、ミライから切り出しちゃったよ!

「どうしてそんなこと聞くの?」

そうだよミライ、どうしてそんな事を?

「だって、広海さんがいないと先生が寂しそうなの。見てて辛くなっちゃう。だから仲直りして欲しくって」

コクンと小首を傾げてる。

そんな風に思ってたのか。

「へぇ~、意外ね。私と先生の仲が悪くなる方が、あなたにとってはいいんじゃないの?先生を独り占めできるじゃない」

確かにそうだよな。

と、ミライが首を振って返した。