シーンと静まり返った研究室。

研究員たちも輪を解いてあちこちにバラけてしまった。

「二号機ペアは早々と戦線離脱か…」

クワンとロイを揃って失うなんて、研究所にとっては大きな痛手だろうな。

「だからこのふたりを一緒にするのは反対だったんですよ」

本田君がロイの傍にしゃがみ込んだ。

「反対してたんだ、本田君は」

そうだったのか。

「初めから嫌だったんです。二人の姿を見て益々そう思いましたよ。クワンのロイへの入れ込みようは尋常じゃなかった…。僕は怖かったんです」

「えっ?」

怖かったって?

「クワンがロイにのめり込む、その気持ちに応えようとロイが全身でクワンに報いる、そんなロイにますますクワンが心奪われる…。そのままクワンとロイが、戻って来れなくなる所まで行ってしまうんじゃないかって、そんな嫌な予感がしてたんです」

戻って来れないところ、か。

クワンとロイのいちゃつき様は、人とロボットの関係じゃなかったもんな。

「昨日クワンの病室で、いくら呼びかけても反応しないクワンを目の前にして、ロイが愕然としたように膝から崩れ落ちたんです。本当に人間のように。まるで愛する人を失った男の姿そのままに。その落ち込み様を見て思いました。ロイのココロは、本当にクワンの事を一途に想っていたんだなって」

恋人同士だったってワケだ。

「ロイは、自分からクワンを追いかけて行ったのかもしれません…」

なるほど。

クワンを想うばかりに、か。

(そこまで想うココロが、ロイにはあったのか)

クワンを追わずにはいられないココロが。

と、本田君が一度宙を見上げてガックリと顔を伏せた。

「自分だけじゃなくて、ロイまで僕の手の届かない所へ連れて行こうっていうのか、クワン…。そんなにロイがいいのか、クワン…」

俯いたまま、握り締めた拳を震わせてる。

(本田君、ひょっとしてクワンを…)

そうか、そうだったんだ。