「ええ。所長も来たがってたのよ。でも、本田君と一緒に局長に捕まってしまったの。予算の使い過ぎで、これからどうするのか話し合いをするって言ってたわ」

クワンが首をすくめてる。

それは来れないワケだね。

とクワンが、広海君に歩み寄っていった。

ん?

両手をパンッと胸の前で握り締めて、話し掛けようとしてるじゃないか。

「あなたが広海さんね!はじめまして。私はクワン。お話は『色々と』聞かせてもらってるわ。ぜひ一度会いたかったの。嬉しいっ!」

って、あの、クワンさん?何をそんなにはしゃいでるんですか?

「エヘッ、そうなんですかぁ~?こちらこそよろしく~クワンさん」

広海君が笑顔で応じてる。

でも、一瞬チラッとこっちを見て眉をピクッと動してたゾ。

(こりゃ穏やかじゃないな…)

後で何か言われそうだよ…。

と、クワンがパッとロイの腕を引っ張った。

「彼は同じ研究所にいるロイ。イイ男でしょう」

自慢げに微笑んでる。

確かにキリッと整った顔立ちは、アジアの映画スターのようだよ。

「はじめまして」

と、ロイがスッと笑顔で広海君に手を差し出した。

(おっ、握手をする気か?!)

まあ、バレないとは思うけど…。

「はじめましてぇ~。ほんとカッコイイですね~」

何事もなく広海君がロイと握手を交わす。

良かった良かった。

「ミライさんもロイにきちんと会うのは初めてかしら?まだ話はしてない筈よね」

そうか。

『定期健診』の時はミライがセーフモードで動いてなかったし、その前はロイがまだ起動していなかったな。

「はい。はじめまして、ミライです」

手を差し出すミライ。

ロイが笑顔で握り返してる。

(…これってホントは、ロボット同士が握手を交わしてるんだよな)

実は歴史的な一瞬を目の当たりにしてるってワケだ。