「所長、いつかバレるなら、ミライの正体を今のうちに正直に話しちゃダメですか?」

そのほうがお互いキズが浅くて済みそうですよ。

「そんな事はないよ」

ハイ?

何ですって所長?

話がかみ合ってませんけど?

「バレるなんて、ボクは思ってないよ」

まじまじと見つめてくる所長。

そう来ますか。

「いやでも、嘘をつき続けるのが正直、」

ちょっと辛くなって来たんですけど。

とハッと息を吐く所長。

「何言ってるんだい、嘘をついてるんじゃないよ。条件付けをしてるんだよ。人が隣にいる存在を人じゃないと疑う時はどんな時か、そんな歴史上たった一度きりの貴重な、重要な、またとない実験の条件付けをね」

グッと身を乗り出してくる所長。

「ほかの誰でもない、君に任された、いや、君に託された唯一無二の貴重なこの実験を、みすみす自分から壊してしまうつもりかい?」

「いえ、…」

気付いたら首を振ってた。

なんだろうね。

(この人の、『人のおだて方』のウマさは神業だナ)

思わずノセられちゃうよ。

「まぁボクはね、バレる事なく無事にこの実験が終わるんだって自信があるけどね。とにかくさ、ミライたちが戻ってくるのをゆっくり待とうよ」

ニッコリと背もたれに身体を預けてカップを口に運ぶ所長。

「わかりました」

頷いて返す。

そうだよ。

無事に終われば問題ないんだ。

その為に、もうちょっと頑張ってみようかな。