研究室のスチールの扉を開ける。

驚いた。

まるで昼間のように声が慌ただしく飛び交ってる。

(ん?)

ただ、その賑やかさの中心は二号機が立つ円筒形の方だった。

(…おっ、いるいる)

目を閉じ微笑みを浮かべた顔のミライが、一人でスタンドに立っていた。

耳からケーブルも外されて、すぐ傍には見守るように所長が立ってる。

「所長!」

呼び掛けるとパッと笑顔で振り向いてきた。

「やぁ、待ってたよ」

「ずいぶん賑わってますね」

「ロイのセッティングが大詰めだからね」

「ロイ?」

初めて聞く名前ですけど。

「二号機の名前さ。クワンが名付けたんだ」

「へえ、じゃあいよいよ二号機も動き出すんですか!」

ミライに続いて、二号機までもが動き出そうとしてる。

道理で大にぎわいなワケだ。

「その二号機もクワンと一緒に暮らすワケですか?」

僕とミライみたいに。

「そう。ただロイはここで、閉じた環境の中で実験を行うんだ。外へ出すのは大変なんだって、君を見ててつくづく思ったよ」

そうですか。

ようやく僕の苦労をわかってくれましたか。

「オープンな環境のミライと、閉じた環境のロイ。ココロの『トリガー』となるプログラムをソフトで追加したミライと、ハードで組み込んだロイ。いい比較対照実験になるはずさ」

らしいセリフを並べますね所長。