「ひとりって寂しいよ…」

おでこを僕の肩に当ててくる広海君。

「私、寂しいんだよ」

素直な言葉。

そうだよ。

思えばいつだって、彼女は僕に気持ちを真っ直ぐにぶつけてきてたんだ。

嬉しい、悲しい、悔しい、寂しい。

すべて裏表なく、隠すことなく、正直に。

今まで、男を手玉に取る大人びた子だと思っていたけど、

素直に気持ちをぶつけてくる彼女が急に、とても幼く可愛らしく、いとおしく思えてきた。

「ねぇ先生、寂しいよ…」

僕の腕の下に潜り込むように抱き付いてくる広海君。

体の温もりが熱く伝わってくる。

「大丈夫だよ。ひとりじゃないよ」

そう声を掛けるだけで終わってたと思う。

今までなら。

今は、寂しがってる心も体も全て抱きしめてあげたいよ。

「ひとりじゃないんだ」

自分にも呼びかけるように声を掛ける。

「こうやって今、二人でいるんだから」

彼女の頭を撫でながら、包み込むように優しく抱きしめた。

「うん…」

頷いた彼女の首筋にそっと手を添える。

顔を上げて、潤んだ瞳から涙がこぼれないようにそっと瞼を閉じる彼女。

「ひとりじゃないんだ」

涙が滲む目尻を指でそっと拭う。

手を頬に添えて唇を近づける。

教授の言う事に間違いはなかった。

こんなに心満たされた口づけは初めてだ。