次の週の金曜日。

実験室でお盆前最後の実験を行った。

さすがに暇な学生が多いのか、モニターになってくれたのは男女10人づつ計20名の大所帯だ。

「始めるわよー」

広海君の声で実験が始まる。

傍では白衣がすっかり身に付いたミライが、じっとガラス越しに無音室の中を覗き込んでる。

「ねえ、一度ミライさんも実験やってみない?」

オ、オイッ!何を言い出すんだよ!

「ううん。私あんまり入りたくないの。この部屋」

眉をひそめて首を振るミライ。

「…そっか。病院みたいな装置ばっかりだもんね。ごめんなさい。もう言わないわ」

申し訳なさそうに声を返す広海君。

ウンウン。

どうやら倒れた後に組み込んだミライのプログラムと、広海君の思い込みが上手く働いたみたいだな。

「先生もたまには中に入ってみませんかぁ?」

何言うんだい広海君。

「いやいや、よかったら君の頭の中の方を詳しく調べてあげるよ」

どんな思考回路なのか知りたいものだね。

「遠慮しまーす」

澄ましてるよコイツは。

『プルルル…』

と、携帯が鳴り出した。

珍しく所長からだ。

「センセー、ここケータイ厳禁です」

広海君にツッ込まれて、慌てて廊下へ出て電話に出る。

「所長、どうしたんです?」

「今すぐミライと一緒に来てくれないか」

いきなり息切れした声の所長の顔がドアップに映った。