渋いマスターが変わらず僕らを迎えてくれた。

「いい雰囲気だね、ウン」

所長が気に入った様子で、何気ない仕草でスッとカウンターの奥へ寄っていく。

「マスター、何かボトルを」

椅子に腰掛けながら声を掛ける所長。

マスターが棚からボトルを一本取り出して所長に見せる。

「それでお願いするよ。水割りでね」

と、そこから慣れた手つきを見せるマスター。

すぐにサッと水割りとおつまみが出てくる。

「じゃ、僕たちのミライに、乾杯」

ニヤリと微笑んだ所長と一緒に、水割りのグラスを傾けた。





 しばらく他愛もない会話を続けた後、所長がポツリと言葉を漏らした。

「人はなぜ、感情ってものを感じるんだろうね」

「え?」

いきなり抽象的な問いですか?

急にそんな事言われても、どう返して良いのかわかりませんよ。

と、所長が構わず言葉を続けてきた。