所長のマンションの中は、部屋も廊下もダンボールで溢れていた。

「いやぁ~片付いてなくて悪いねー。何しろさっき引っ越してきたばかりだからさ。あ、紹介しとくよ、ボクのカミさん」

所長がリビングに導きながら奥さんを紹介してくれた。

「はじめまして」

会釈をする奥さんは、丸顔で目尻の垂れたやさしそうな顔をしていた。

「で、うちのカワイイお姫様ふたりさ。ほーら愛ちゃん舞ちゃん、ごあいさつはどうしたのかなあ」

所長が、奥さんの足元に立っていた女の子たちに声を掛けた。

「はじめましてー」

「はじめまちてー」

ふたりの可愛らしいごあいさつ。

「でさ、片付けるの手伝って欲しいんだけど、いいかな?」

なるほど~、それが本音だったわけですね所長。

「ええ、もちろんいいですよ」

それぐらいお安い御用です。

「助かるよ。晩ゴハン食べてっていいからさ」

「えっ、でも」

思わずミライに視線を送った。

所長、わかって言ってるんですか?

と、所長がスッと耳元に顔を寄せてきた。

「カミさんにはミライの事、話してあるから」

「あ、そうなんですね」

それなら安心。

所長を手伝って荷物運びに精を出す。

だけども日が暮れても片付けが終わらず、そのうち奥さんが夕食の準備を始めてしまって、気が付くとミライも横で手伝っていた。

(いつの間に…)

ミライがエプロン姿で台所に立ってる。

なんだか目に新鮮に映る後姿だ。