机が島型に並ぶ乱雑とした研究所の控え室。

椅子を一つ引っ張って来てくっ付いて座る二人の彼女が、どこで手に入れたのか化粧品のサンプルを分け合って、手に試し塗りをしながらワイワイと楽しげにおしゃべりをしている。

見てるこっちの口元が思わずほころんじゃうような微笑ましい光景。

(色々あったよなー、ここまで来るのに)

ふたりの彼女との『この出来事』が始まったのは、ある春の日の朝の事だ。





 僕はその日、いつも通りに二階の廊下をカツカツと靴音を響かせながら歩き、教授室のドアを開けた。

「おはようござい…」

目の前すぐに狭苦しく置かれた革張りの応接ソファー。

中年の細身の男性と並んで座っていたのが彼女。

(おぉっキレイだ)

それが彼女の第一印象。

「…まあす」

それにしてもなぜ?と不思議に思った。

今日の予定欄は空白。

つまり突然やって来たって事。

どうしてこんなに朝早くから?