暴君陛下の愛したメイドⅠ【完】





直ぐに気分が沈むことになるとも知らないで。


図書館の出入り口へ到着し、使用人がドアを開けようと近寄りかけたとき______



ガチャ。



使用人が開ける前に、ドアが開いた。


いち早く向かいの人を見た使用人は驚きに満ちた表情をし、頭を下げた後に素早く私の後ろへ着く。



本のタイトルをジーッと見ていた私は、直ぐには相手が誰が分からなかった。


相手が誰か気づいたときには既に遅く、持っていた本はスッと上へ持ち上げられる。


「え?………………………………ぎゃっ!!!」


「ぎゃ…とは、品のない」

私の反応に陛下の近くにいた宰相がいち早く反応した。


確かに品はなかったけど、気づいたら目の前にいるんだよ!!??びっくりするよ!!!


「あの…………………陛下。その本返して頂けませんか?」


それより、その本返してほしいんだけど。


陛下は『ふーん』といったような顔で、私の持っていた本を手にとって眺めていた。


「こうゆう本のどこが面白いのだ」

「………お話が好きなんです。読むだけで心が満たされるのです」

「こんなのでか?」


「………えぇ」


買いたいけど無駄遣いはしたくないし、ここならたくさんの小説を置いている為、好きなだけ読みたい本を読める。


宮殿の中では結構お気に入りだったり。


「……ありがとうございます」

少し間があいた後に、陛下は私へ本を返してくれた。



……………それより、陛下も図書館を使うのか。


当たり前と言ったら当たり前なんだけど、何か以外。


陛下なら専用の書斎ぐらいありそうなのに。



「用事が済みましたので、私はこれで失礼致します」


欲しい本を手に入れた私に、ここにいる必要はもうなかった。


陛下に頭を軽く下げた後に、横を通り過ぎようと右足を前に出す。