暴君陛下の愛したメイドⅠ【完】







「……あれ?何これ」


好みの本が見つかり、そろそろ部屋に戻ろうとした時。


歴史書などの並ぶ古めのコーナーで私は足を止めた。


「どうかされたのですか?」


「あ………いや」


近くにいた使用人達は不思議そうに私を見つめる。


その棚には国の歴史本が多く並べられてあったが、ある本だけ少し周りの本とは違った。


それにはタイトルも何も書いておらず、パッと見た感じ茶色の日記帳の様にも見えた。



開こうと手を添えたが、何だか不思議とパンドラの箱を開けるような感覚に陥り、私は思わず添えた手を離した。


直感だが…………………………開けてはいけない何かを開けてしまうようで、中々開くことが出来ない。


「…………………行こう」


気にしつつも私はその本を棚に戻し、出入り口へと向かう。


取りあえず見たい本を手に入れた私は、先程の事など直ぐに忘れ、早く見たいと気分が高まっていた。


「部屋へ着いたら美味しいお茶を入れますね!商店街で美味しいお菓子を見つけたので♪」


そんな使用人の言葉に、更に私の気分は高まる。