暴君陛下の愛したメイドⅠ【完】




もちろんそのコーヒーは、

「まだ帰ってきていないのか」


いつも執務室へ運ばれてくるあのコーヒーではなかった。


「アレから長期間の休暇届が出されておりました。いつ帰ってくるかは………今の時点では分かりかねます」


流石のファンも困った表情。


あの味のコーヒーを入れられるのはあのメイドしかいないからだ。


それに、あのコーヒーの味を知っているのも陛下しかいない。



「まぁ、よい。それより図書館へ向かう。準備せよ」


陛下は飲み終えたコーヒーカップをソーサーへ戻すと、マントを翻して図書館へと向かった。