暴君陛下の愛したメイドⅠ【完】




「勝手に死ぬことは許さぬぞ。お主の願い通り『いっその事殺してくれ』と助けを乞うような拷問を受けさせてやる。感謝するが良い」


「…………………ひっ!」


「死体を速やかに片付け、この者は牢屋へ連れて行け」


「「「御意!!!」」」


近くにいた兵士に指示を出すと、あっという間にその場が片付いていく。



男に開放された私はホッと胸のなでおろし、近くに立つ陛下に向きなおった。


「陛下はエスパーでございますか?」

「えすぱー?それは何のことだ」


「本で読んだのですが、どうやら人の心が読める人などの様な例えのようです」


心の中で叫んだから来てくれたような気が少しだけした。


ただの偶然だろうけど。


「面白い事を言う女だ。仮にそのえすぱーだとしたら、余は無敵ではないか」


無表情でもなく、黒い笑みでもなく、フッ………と笑う陛下を見たのはあの日以来な気がして、


どちらかと言うと今の方が優しい笑いに見えた。