暴君陛下の愛したメイドⅠ【完】




見下すようなその視線。


周りにはこの男とその付き添い人や兵士、そして私以外には誰もいない。


使用人をつけてこなかったから、もちろん私の使用人もいないし、宮殿の使用人でさえ歩いていない状況で


私は嫌な胸騒ぎを感じた。



「先を急いでおりますので………」


そう言ってその場を離れようとするが、掴まれた手首が邪魔でその場から離れられない。



「生意気な態度はどこも同じのようだ。偉そうな皇帝陛下も」

その言葉には怒りが込められており、あの商談で恐らく何かあったのだろうか。


「客人を奪われれば焦るに違いねぇ。いや…………見放すかもしれねぇか。でも、生意気なやつを消せば憂さ晴らしになるってものよ」


『こい!』と強引に掴んだ手首を引張っていく。


「やめて!!離して!!!」


必死に暴れるが周りを兵士で囲まれ直ぐに身動きが出来なくなった。