ドレスの裾が歩くのに邪魔なので、膝辺りまで持ち上げ先を急いでいたが……………
予期せぬ人に遭遇してしまった。
見つかる前に急いで裾を元に戻す。
入り口で立っていたのは、あの商人の姿。
「…………帰る前にこうしてまた会うとは思わなかったよ」
顔は笑っているのに、目は笑っておらず
言葉ではその場の雰囲気を壊さないようにしているが、とても悪いものを感じる。
「私は急いでいますので」
あえて相手にしないように、その横を通り過ぎた。
下手に捕まってしまうと、色々と面倒だから。
しかし、相手は自分の邪魔をした私を見逃してはくれなかった。
咄嗟に手首を掴まれる。
「おいおい、つれねぇな。俺はこう見えても嬉しいんだぜ?道の邪魔したガキをかばった女と、こうしてまた会えたんだから」
あの事をやはり根に持っているようだ。
「………失礼を申し上げますが、私は全然嬉しくありません。それにこの腕を離して下さいますか?」
「使用人はどうした?」
「貴方に教える義理はございません」
「…………っふ。馬鹿だなお前は。一言謝れば許してやったのに」
あざ笑うかのように私を見た。



