_____数時間後。
お手洗いに行きたくなってしまったという口実で、後を付いてこようとした使用人に断りを入れた私は、宮殿の隣に建てられた使用人専用の建物を目指して一人長い廊下を歩いていた。
唯一この建物と宮殿が繋がるのは、3階の端にある通路だけ。
しかも使用人専用の特別な裏の階段でしか繋がっていない為、一度1階に降りて周り込む必要がある。
周りに注意を向けながら慎重に1階へ降りた。
伊達にこの宮殿に長く務めていた訳ではない。
この時間には何があり、人通りが多い、少ないなど、ある程度は把握している。
今日は幸いにも陛下は客人に忙しく、使用人達はその方が一体どんな方なのか気になり浮足立っている。
官僚達は客人を相手にしている陛下への報告は控えるはずだから、下には降りてこない。
そう。今がチャンスなのだ!



