暴君陛下の愛したメイドⅠ【完】




「ほら、背中に乗って」

「うん……………」

道路にいても危険なだけなので、女の子を背中に乗せてどこか安全そうな場所に移動することにした。


「アニ様……っ!私共が致しますから…………」


「いいの!これぐらい私にやらせて?」


偶然近くにベンチを発見した私はその子をそこに座らせた。

「貴方たちはちょっと席を外してくれる?」

「かしこまりました」


今からする事はあまり知られてほしくないことだから。


女の子は未だ痛そうに顔を歪めている。


「ねぇ、今からお姉さんがマジックしてあげるね!」


「マジック…………?」

「そう!マジックというのは、ここから遠く離れた国の方がこの国に来て下さった時に、披露してくれた不思議な技よ♪」

宮殿で使用人をしていた頃に、陛下へ披露しようとマジシャンと言われる方が来た事があった。


(噂ではまるで魔法かのような技で、物を消したとか現したとか……………………)

まぁそれは良いとして、そう言えば今からする事もマジックだと思ってくれる。


「ハナも見たい!マジック!!!」

「ハナちゃんと言うのね?素敵な名前。じゃあ、今からマジックを披露してみせるよ!」

ハナちゃんの怪我していた膝にそ………っと手を添える。


そして静かに目を閉じて、膝だけに集中する。


「なんか、膝が暖かい!」


丸い緑色の光が膝を包む。


そして、そっと手をのけると_____


「わ!すごい!!!傷が治った!!!お姉ちゃんのマジック凄いね!」


傷は綺麗に消えていった。


これが私の代々伝わる力。

治癒能力だ。