暴君陛下の愛したメイドⅠ【完】




そう思うと、私は思わず兵士の前に手を横に広げ、女の子を庇うようにして立っていた。


遠くからは使用人の叫ぶ声が聞こえてくる。


でも、この場で何もしないよりはマシ。


小さい内は誰かに守って貰わないと何も出来ないの。


私もそうだったから。


幼い頃にさらわれて、怖い思いして、それでも大人が助けに来てくれた。

守られ、そして守って。そうやって人は大きくなっていくんだと思う。



「そこの女、怪我したくなれりゃどけ」


鋭い商人の声。


「退きません。なぜこの幼い子がこのような目に合わないといけないのですか?ただ道に飛び出してしまっただけでしょう?何よりこの子に怪我がなかったのが何よりだと思いませんか?」


確かに事故になりかねなかった。

だけど、殺す必要なんてないじゃない。


「女が口答えする気か……?俺は他国でも有名な家具屋の商人だぞ?」


「家具屋の商人……?」


「あぁ!!!!お前じゃ到底手の入らない品物だ!!!!」


家具屋は多数存在するが、他国で有名となると少しは絞られる。

宮殿で使用している家具はこの国の有名な家具商人が作っている高級家具だがその者ではないし、他国規模で言うのなら最近噂に聞く_____


「レイディーナ家……………」


「何だ貴様知っているではないか」


デザインも質も良いが、人気になるにつれ横暴な態度ばかりするようになったと、いつしか出会った商人に聞いたことがある。


「レイディーナ様…………以下がなさいますか?」

「構わん。この女ごと殺せば良い」


何の躊躇いもないそんな言い方。今までそうやって数多くの人を簡単に殺したのだろうか。

素晴らしい才能を持っているのに残念で仕方ない。