暴君陛下の愛したメイドⅠ【完】




「そのブーケはピンク色の見た目が可愛いので、女の方に人気があるんです。それにピンクのガーベラには素敵な花言葉があり、感謝や思いやりなどにちなんでその花を使ったブーケを選ばれる方が多いみたいです!」


ドライフラワーを選んだときもそうだ。


花にはそれぞれの花言葉を持ち、素敵な言葉もあれば残念な言葉も存在する。しかしどんな花言葉であろうと、意味を持つ花言葉は素晴らしく思う。


若干値段はしたが、私は部屋に飾る用としてひと束のブーケを購入した。







お店を出ると何だか道の方が騒がしく、皆が群がっているように見えた私は、思わずその中へ混じって様子を伺った。


「どうしたんですか?」

「ん?あぁ、何か他国の商人が今馬車で宮殿に向かっているそうだ。流石デザイナーとでもいうべきか、その馬車は華やかだったそうだ!!!!」


(他国の商人……………か。宮殿に行くから中が騒がしかったわけね)


恐らくその商人は普通の商人ではない。何かしら手荒に扱えない訳があるのだろう。


国にとって有利な存在か、もしくは他国との繋がりが深く敵に回せないのか。


ともかく宮殿内が騒がしいのは、それが関しているのだろう。


幸い見た感じ、パレードのようにゆっくり馬車を動かしている為、先に帰る事ができそうだ。


上の者に伝えているとはいえ、私が宮殿にいないと大騒ぎになっても困るし。


「戻ろう」

「はい。アニ様」

背を向けて帰ろうとした時、


「キャ~!!!」


5つ程の幼い女の子が、分からぬまま道に飛び出してしまった。


運悪く女の子は馬車の前に飛び出し、驚いた馬が鳴き声を上げて立ち止まる。


「どうした?」

「す、すいません。女の子が急に飛び出して来てしまいまして……………」


中から商人である、30代程の男が外へ顔を覗かせてきた。


髪を上にかきあげワックスでセットした、ビジネスマンに多い紳士的な髪型の、その男。


誰かに似たような、酷く冷めた表情をしていた。