「…………で、なぜ余の側を去ったのだ」
知ってもなおなぜ聞いてくるの……?
去った理由は何となく分かるというのに。
これを私にわざわざ言わせるの?
「私は………メイドです。ここに仕える使用人です。そんな私が陛下の側にいて良いはずがありませんし、それに……………………お分かりの通り、その名は偽名です。私は陛下に数々の嘘をつきました」
陛下だけでなく、宮殿にも混乱を招いた。
話すたびにどんどん罪が重くなる。
「…………そう言えば会った時からそうであったな。ここには入れぬ、このような待遇は受けれないと申していたそれを、無理に押し付けたのは元はといえば余だ」
懐かしむような優しい声………。
「では、そなたはメイドの身だからとこの場を去ったのか?」
「………………………それもありますが」
こんな力を持ち、表で出さなくとも宮殿内が荒れたというのに、
これ以上いたらまた大切なものを傷つけてしまう気がした。
「私は陛下の側にいたらいけない人間なのです」
使用人として陰ながら陛下の事を支えるだけで充分幸せだ。



