暴君陛下の愛したメイドⅠ【完】




何か……この人は危ない。

そう思い後ろへ後ずさりするより早く、鋭い剣が私の前に晒される。


「な………何をする気ですか?」


「これ見てまだ分からないというのですか?」


………………………先がキラリと光り、その光景についあの日の事を思い出す。


男たちに拉致され、このまま連れ去られるかもしれないと絶望したあの日。


そして、剣を向けられるあの恐怖。


「貴方、何をしているのですか………!!!」


「誰か、兵士を!!!」


周りも流石にこの状況に気づき、焦りの声を上げる。


「花はいずれ枯れ散る。これでお終いだ」


上に引き上げられた剣が勢いを増して私に迫る。


逃げることも叫ぶことも出来ず、


ただ体だけが固まって動かない。


_____ザクッ…。


鈍い音が部屋に響いた。


真っ赤な血が池のように流れ出す。


周りの悲鳴で部屋の中は埋め尽くされた。