暴君陛下の愛したメイドⅠ【完】




「そのときに言っていただろう?『最近では良く似せた偽造品が増えている』とな」


確かにそんな事を言っていたような気がするが……………………それが一体どうしたのだろう?


「素人どころかそれを愛用している者さえ、見分けるのが難しいと言われる本物のマテオ・マテラの作品と偽造品をいとも簡単と見分けたのだ」


「………えっ!?」


俺やリードは普通に見分けれるが、試験を突破した使用人達や官僚でさえ、その違いを見分けられぬ者が中にはいるというのに……………………それをあの女が!?


賢そうだとは思ったが………………………本当に賢いとはな。


「それはスゴい事だな」


「だろう?それも含めパーティーで思ったのだ」


「何をだ?」


この流れ的に罪を問う感じの話ではなさそうだ。


だとすれば俺を呼んだ真意とは…………………。


「アニを余の妃とする」


「……………………………………はい!?」


頭が一瞬フリーズする。


今何と言った?


アニさんを…………一体?


「……間抜けな声だな。アニを余の妃とするがゆえ客室から空いている部屋へと移動させよ。ちょうど余の寝室近くに1部屋空いていたはずだからそこでよい」


「アニさんを妃にされるのですか!?」


考えられねぇ…………………。いくら妃に関する話をしてもめとらないコイツが……。


「流石に毎回、お前から娶れと言われるのが苦痛になったがそうする事にした。パーティーに関しても大事な人がいると言えば、皆大人しく去っていくし色々と便利だろう」


便利って………………道具かよ。


まぁ、リードが妃を作ってくれることに関しては賛成だ。


しかし、アニさんはどうだろう?


「普通の女なら喜ぶだろうが………先程話を聞いてた通りではかなり断りそうだが?」


「そこは問題ない。あやつが断ることは既に目に見えている。仮に拒んだとしても余は妃にさせる気だ」

「それは無理やり………と言うことか?」


「嫌がる顔を見るのも悪くない。あやつの反応は余を楽しませる」



酷い奴…………。


他国を侵略してしまうほどアニさんがされた事に対し怒っていたのに、


反応を楽しむために側に置く。


少し変わったと思ったが………俺の気のせいだったのか?


しかし、嫌いな奴であったら妃などしないし


それを考えるとやはり、少しだけ心はあるのかもしれないな。