暴君陛下の愛したメイドⅠ【完】




だから私はいつだって気が抜けない。


見せてしまえば、やられてしまいそう。


「そろそろ中へ戻るとするか。いつまでもここにいたら風邪を引きかねない」


「……そうですね」


そんな気持ちを悟られないように私は笑顔で返事をし、パーティー会場へと戻ると、一層パーティー会場は騒がしく感じた。


沢山人の集まる場所を見てみると、その中心部にきらびやかな衣装と豪華な宝石を身にまとい、


金髪の髪をくるりと巻いて、高い位置に結ばせた美女が周りに笑顔を振りまいているのが見えた。


その人は陛下を見るなり嬉しそうな表情をし、その輪から飛び出して駆け寄ってきた。


と言っても走ってきたわけでなく、実際には優雅に歩いてきたんだけれど。


「お久しぶりでございます。私(わたくし)、ヴィスタン王国の第ニ王女ステラと申します」


ドレスの裾を掴み、淑女の基本となる挨拶を交わす。


「……余こそ招待状を貰いながら、中々パーティーに参加できずにすまなかった」


「いえ………っ!こうして参加してくださるだけで、私はとても嬉しゅうございます」


私の前で繰り広げられるそんなやり取り。


ステラ王女は頬を赤く染め、うっとりした様子で陛下を見つめている。