さて、視点はアニーナに戻る。
「3日ほど休暇を頂けませんでしょうか?」
日は既に沈み1日の作業を終えた頃、アニーナはメイド長の居室へと足を運んでいた。
その理由は単純であり、休暇を頂くためである。
「なぜ3日も必要なのです?」
温かみのあるオレンジ色のランプで照らされた薄暗い部屋で、椅子に浅く腰を掛け、こちらに鋭い視線を向けているのは本歳67歳になるラディカルメイド長。
「貴女は陛下のお認めになった側近部の者。そのような者が3日も仕事を放棄するなど豪語道断です」
「確かにその通りかもしれませんが、お忘れでしょうか?以前も3日間頂けております。心配なさらなくとも、仕事には支障をきたしませんのでご安心ください」
陛下の休憩時間にいつも煎れるコーヒーの件は、アイルさんに頼んだからきっと大丈夫だろう。
その他に自分の受け持っている仕事に関しては、今日中にある程度終わらせたので皆困らない。
「……………………………………確か以前は里帰りでしたしたね。今回もですか?」
「はい。ここから故郷の里まで半日かかるので、里帰りの際にはこのように3日間の休暇を頂いております」
本当は馬車などを使った方が早いのだが、私用でそんな高価な乗り物には乗れない為、35kmの道を徒歩で行くしか他ない。



