「じゃあちょっとだけ撮り直してもらおっか」



悠君はそう言って、自分の左手をかざした。



「それ……どうしたの?」



薬指に、きらりと。



「去年沙羅の指輪を買ったときに実は予算なくって、取り置きしてたんだよね。
で、今日やっと取りに行ったんだ。
1年以上キープするなんてあり得ないんだって。お店のお姉さん困らせちゃった」



私のと同じ指輪が光ってた。



「早く見せたかったのに、こっち見ようともしないしさ」



「だね、ごめんね」



そっと自分の左手も出してみた。



形にはできない約束とか
相手を自分だけのものにしたいって欲張りな気持ちとかが、二つの指輪に込められてる。



いえば煩悩のかたまり。



それなのになんでこんなに嬉しくなるんだろう。なんで涙があふれそうになるんだろう。



「手が映るところが何カットかあったでしょ、そこだけこれつけて撮り直してもらおっかなって、どう?」



「それすごく嬉しいかも」



「じゃ、そーしよ♪」



「悠君……ありがと」



「どっちを選ぶにしてもそうしてもらおうって、ほんとは最初から決めてたんだ」



そっと私の手を取って、
悠君は薬指に小さなキスをしてくれた。