「いただきます。」
両手を合わせてから、数本のうどんを箸で掬う。
温かいうどんを啜って、数回咀嚼して飲み込んだ。
口に広がるやさしいお出汁の味。
すごく美味しい。…はずなんだけど……
「うっ……」
うどんを飲み込んだ瞬間、まるで胃が拒絶反応を起こしたように吐き気に襲われる。
私は慌ててトイレに駆け込んだ。
「結衣!?」
「うぇっ……ゲホッ…ゲホッ…」
気持ち悪い…
すぐに駆けつけた禅くんが、トイレで踞る私の背中を優しく擦る。
「大丈夫か?」
すべて吐き終えた私に水を差し出す彼の顔は、本当に心配そうだった。
「うん……ごめんね。
うどん、せっかく作ってくれたのに…
食べられないかも…」
「いいって、そんなこと。
…辛いなら病院行くか?」
「大丈夫。
たぶん寝たら治ると思う。」
力なく笑う私の頭を、禅くんはゆっくり撫でる。



