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「あ!この曲知ってる!
私、このバンド好きなんだ!
禅くんもよく聴くの?」
「まぁ、わりと。
お前がよく口ずさんでただろ?」
え…?それって…
私が好きな曲を聴いてくれてたってこと…?
そんなことをサラッと言う彼に、胸が高鳴る。
病院を出てすぐにお昼ご飯を食べて、少しだけ街をブラブラ歩いて…
ただいま、例の目的地に向かっております。
「…結衣、ガム1個くれ。」
「あ、うん。…はいどうぞ。」
ケースから1粒ガムをとって、彼の口の前に差し出す。
すると彼は、ガムを摘む私の指ごとがぶりと噛み付いて…
顔を真っ赤にする私に、「ありがと。」とイタズラな笑みを見せた。



