禅side






始まりは、ある日の夕方。

雄大からの1本の電話だった。










「…もしもし。」





『禅……悪ぃ……』








電話口から聞こえる、乱れた息。

声も少しおかしかった。


俺は雄大のその一言だけで、何かが起こったのだと察した。









「雄大、どうした?…何があった?」





『…悪ぃ……

俺…結衣のこ、と……守れなかった。』











────ドクン…


雄大のその言葉に、心臓が嫌な音を立てる。




結衣の身に何が起きた…?

犯人は……?




そう問いただしたい気持ちをぐっと堪えて、なるべく冷静に雄大に尋ねる。










「雄大、お前今どこにいる?」








結衣の事ももちろん心配だが、雄大もかなりの深手を負ったず……

まずは雄大を助けるべきだ。