「…それにしても、こんな偶然あるんだね。
まさか婚約の相手が禅くんだったなんて…
正直驚いたよ。」
この動揺を悟られてしまわないように、出来るだけ平然を装う。
「───偶然なんかじゃねぇ。」
「…え?」
彼のその言葉に、私は思わず素っ頓狂な声を上げた。
「…いや、半分は偶然か。」
「どういうこと?」
よく理解できない発言に私が聞き返すと、彼は少しだけ伏し目がちに言った。
「この婚約話、元々は俺の弟に来てた。
…でも相手が唐沢のお嬢だって知って、親父に土下座して頼み込んだ。」
そう言えば、私も婚約者は同い年だと聞かされていたな…
でも…
「…なんでそこまで……」
嬉しすぎて涙が出そうだった。
私よりいい女性なんて、禅くんなら探せばいくらでもいるはず。
それでも、私との恋を守るためにここまで必死になってくれる彼が、余りにも愛しかった。



