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無駄にだだっ広い見慣れた我が家の庭を、彼と並んで歩く。
「あとは若い者同士で」という組長たちの計らいで、大人数で暮らすこの屋敷では不自然なほど周りに人はいない。
みんなは大部屋で宴会中。
顔合わせの間もずっと彼に鋭い視線を向け続けていた佑も、半ば強引にあちらに連れて行かれた。
「お前は、ここで育ったんだな。」
「うん…」
屋敷の方を見つめる彼の横顔は、とても優しかった。
最後に禅くんに会ったのは、あの救急治療室。
あれから、もうしばらく経つ。
髪、切ったんだ…。
黒髪の短髪で、より大人っぽくなった。
それから、少し痩せた。
しばらく会っていなくても、彼の変化なんて一目でわかってしまう。
だめだ。
やっぱり好き。
喉まで出かけた言葉をぐっと飲み込んで、彼に向き合った。



