唐沢組に恩返しがしたかった。
私が婚約することで、少しでも唐沢組の利益になるなら…私は迷わずこの婚約を受け入れる。
…それの答えは、相手が彼だからって変わらない。
敵対する〝月島禅〟を受け入れることは、昴兄や佑にとって簡単なことではない。
そうすることによって、二人を傷つけることも分かっているつもり。
こんなの、〝恩返し〟とは言えないのかも知れないけど…
ただの私のエゴかもしれないけど…
それでも…
「…あいつは、〝龍王〟の前総長だぞ?
兄貴を襲った張本人だ。
…そんな奴と、家族になれんのかよ?」
佑の悲痛な面持ちに、痛いくらい胸が締め付けられた。



