だけど、周りの様子なんかに気が向くほど、
私も佑も冷静ではなかった。
予想外の〝月島禅〟の登場に、二人ともかなり動揺していたのだと思う。
「…佑の気持ちも理解出来るよ。
昴兄や佑にとって、彼は敵なんだもんね…」
もちろん、私はそんな風に思っていない。
だけどまだ、昴兄を襲ったのが彼らではない
という証拠が見つからないんだ。
「お前まさか…
この婚約、受けたりしねぇよな?」
私の目も見ずにそう尋ねた佑の顔は、とても辛そうに歪んでいた。
ごめんね、佑。
「どんな相手だったとしても…最初から私はこの婚約を受けるつもりだった。
…相手が彼だからとか、関係ない。」



