「組長、お嬢。

先方がお見えになりました。」








キチッとスーツできめた祥さんが、私とお父さんを呼びに来た。









「それじゃあ、行こうか。」





「お嬢、エスコートします。」





「ありがとう。」









差し出された祥さんの手を取り、客間へと向かう。




廊下には、ずらりと組員たちが並ぶ。

いつもとは全く違う我が家の雰囲気。


他所の組長を招く時は、いつもこうだ。

唐沢組の威厳を守るためなのだそう。










「お嬢、綺麗です。」




「ありがとう、祥さん。」








客間の襖が開かれる直前に、彼は小さくそう言った。









「…では、俺はここで失礼します。」





「うん、ありがとう。」









こちらに一礼をして、祥さんは組員たちの列に戻って行く。










「おい、結衣。ヘマすんなよ?」





「お淑やかにね。」









私の後ろにいる昴兄と佑は、心配そうにそう言った。

まったく、私を何だと思ってんの?








「大丈夫だよ。」