「結衣ちゅわぁぁん…
お嫁に行っちゃうなんて、パパ寂しいよ。」
「何言ってんの、お父さん。
今日はただの顔合わせでしょ?
ほら…もうすぐ相手の方来られるんだから、しっかりしてよね?」
泣きべそをかきながら抱きついてくる父に、長女としてしっかり喝を入れる。
そうなんです。今日は顔合わせの日。
もちろん相手は、この間お父さんが言っていた人。
正式に婚約をする前に、少しでもお互いのことを知れるようにと顔合わせの場を設けてくれたのだ。
相手について私が知っている事といえば、年齢くらい。
たしか私と同い年だとかなんとか…
それ以外のことは、お父さんが頑なに教えてくれない。
私だけでなく、昴兄や佑にも教えられていないらしい。
せめて、どこの組の若頭なのかくらい教えてくれたっていいのに…
まぁ、聞いたところで私には、組のことなんてよく分からないんだけど…