「佑、結衣を泣かすなよ。
11ヶ月も後に生まれてるんだから、さすがにお前が〝弟〟だろ?」
「は?そんな事で泣いてんのか?
あんなのただの冗談だろ?」
わざとそう言って俺に怒ったふりをする兄貴に、俺も乗っかってみる。
この重苦しい空気をどうにかしないと、〝いつもの俺〟でいられなくなりそうだったから。
「ははっ…。もう、違うよ。
私がそんな事で泣くわけないでしょ?」
俺たちのくだらない茶番に、彼女は笑顔を見せた。
涙で濡らした頬をあげて、真っ赤になった目を細めて笑った。
「…二人の言葉が嬉しかったの。」
そう言うと彼女はおもむろに立ち上がり、右手で兄貴の、左手で俺の手を握る。