結衣の言う〝話〟とは、きっとあの事。
…聞かれてしまった俺と親父の会話。
帰ったらすぐに話すつもりでいたけど、まさかフライングされるとは…
でも…こうなってしまったなら、もう腹を括るしかない。
「…総長室で話すか?」
「うん、いいんじゃない?
結衣、長くなるかもしれないし…
祥さんには先に帰っててもらいな?」
兄貴が結衣の頭を撫でると、彼女は嬉しそう
に返事をして電話をかけ始める。
「じゃあ、俺は先に帰るよ。
二人の方が話しやすいだろ?」
そう言って優しく笑う兄貴。
…は?まじかよ?
兄貴もいてくれるんじゃねぇの?
俺が呼び止めるより先に、ヒラヒラと手を振って去ろうとする兄貴の上着の裾を、結衣が掴んで離さなかった。



