「…ごめんなさい。
でも、祥さんに連れて来てもらったから…」
祥さん…?
結衣の言葉に辺りを見渡すが、祥さんの姿はどこにも見当たらない。
「…結衣、祥さんいねぇけど?」
「 ‘先代の自分が行ったら気を遣わせるから、車で待ってる’だってさ。」
…祥さんらしい……。
気配り上手で、謙虚で、優しくて…
後輩である俺たちにさえ気を遣うなんて……
「祥さんを足に使ってまで、わざわざここに来る必要はないだろ?
家で待ってれば、夜には帰るのに…」
兄貴は、今度は優しく諭すように言う。
「だって……
はやく話がしたかったんだもん…。」
しゅんとしてそう言った結衣に、俺と兄貴はもう折れるしかなくなる。
こいつ…自分の可愛さをわかっててやってんのか?



